近年、注目を集めているペロブスカイト太陽電池。家庭用販売価格はどうなるのか、また、家庭用として導入がいつになるのか気になりませんか?
本記事では、ペロブスカイト太陽電池の仕組みや価格の現状、そして他の太陽電池との違いについて詳しく解説します。
また、今後の課題や将来性についても触れ、家庭用太陽電池を選ぶ際のポイントをまとめました。
初めて太陽電池の導入を検討している方や、ペロブスカイト太陽電池に興味を持っている方にとって、分かりやすい内容となっています。ぜひ最後までお読みください。
(初回記事作成日 2024年12月 1日)
(最終記事更新日 2024年12月 5日)
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ペロブスカイト太陽電池とは?その仕組みと特徴
ペロブスカイト太陽電池は、新しいタイプの太陽電池として注目を集めています。
ペロブスカイトは、1839年、ロシアの鉱物学者ペロフスキーにより、ロシアのウラル山脈で発見されました。
チタン酸カルシウムという金属酸化物で、光を電気に変換できる結晶構造をもつことが分かりました。
名称は、発見者であるペロフスキーにちなんで、「ペロブスカイト」とされました。
因みに、この太陽電池の発明者はなんと、日本人の方です。
2009年にハロゲン化鉛系ペロブスカイトを利用した太陽電池が桐蔭横浜大学の小島陽広や宮坂力教授らによって発明された。
引用元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ペロブスカイト太陽電池の特徴は、軽量で柔軟性が高いこと、また低コストで製造できる点です。
さらに、弱い光でも発電できるという利点もあり、さまざまな場面での活用が期待されています。
★ペロブスカイト太陽電池の基本構造
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト型構造を持つ有機無機ハイブリッド材料を用いています。
この材料は光吸収能力が高く、発電効率を向上させるために最適化されています。構造は主に「透明導電層、ペロブスカイト層、電極層」の3層で成り立っています。
また、シリコン太陽電池とは異なり、薄膜状に加工できるため軽量化が可能です。
この構造のシンプルさが、ペロブスカイト太陽電池の製造工程を簡略化しています。
★材料の特徴:軽量性と柔軟性
ペロブスカイト太陽電池の材料は非常に軽量で、柔軟性があります。
この特性により、壁面や窓といった場所にも設置でき、従来の太陽電池では難しかった新しい活用方法が広がります。
また、曲げられる特性を持つため、可動部や曲面への設置も可能です。
例えば、衣服やカバンに組み込むような「ウェアラブル発電」への応用も期待されています。
★製造工程の簡易性がもたらす低コスト
従来のシリコン太陽電池の製造には、高温プロセスや高精度な装置が必要でした。
しかし、ペロブスカイト太陽電池は印刷技術を用いて製造可能であるため、大幅なコスト削減が可能です。
特に、大規模な工場を必要とせずに生産できる点が大きな利点です。これにより、製品の価格を抑えることができ、より多くの人々が導入しやすくなっています。
また、経済産業省が試算したデータと、情報サイトでのペロブスカイト大洋電池の発電コストを比較してみるとこのようになります。
参照元:経済産業省のサイトより「発電コスト検証に関する取りまとめ(案)」
:情報サイト「企業省エネ・CO2削減の教科書」より「【2024年最新】ペロブスカイト太陽電池とは?基礎知識と開発動向」
ただし、上記の数値は開発段階での数値であり、「経済産業省はペロブスカイト型発電の発電コストを2030年度までに1 kWh14円以下にする目標を掲げている。」といった情報があるように、あくまでも目安の数値と考えられます。
★弱い光でも効率的に発電できる仕組み
ペロブスカイト材料の特性として、弱い光でも発電効率が高いという点が挙げられます。
例えば、曇りの日や屋内の光でもエネルギーを効率的に変換できます。
この特性により、従来の太陽電池が発電しづらかった環境でも利用可能です。
特に、都市部の高層ビルや日照時間の短い地域での利用において、大きな強みとなります。
家庭用ペロブスカイト太陽電池の販売価格
ペロブスカイト太陽電池は、低コストで製造可能な点が特徴です。
しかし、現在の市場価格は研究開発コストや技術の未熟さを反映して、従来の太陽電池と同程度かやや高めに設定されています。
★ペロブスカイト太陽電池の価格帯
ペロブスカイト型太陽電池は、現在主流のシリコン太陽電池と比較して、低コストで製造可能な特長があります。
シリコン太陽電池の製造コストを「5分の1~3分の1」にまで削減できると見込まれています。
理由は、
・ペロブスカイトを使用すれば、溶解処理によって製造プロセスを簡素化し、高価な設備を必要とせず、低温プロセスでの製造が可能。これにより、シリコン太陽電池に比べて消費する電力を大幅に削減できる。
・ペロブスカイトは薄膜で使用されるため、シリコンを使用した場合の約20分の1の材料量で済む。
ということになります。
★家庭における導入費用の展望
前項で触れたように、ペロブスカイト太陽電池は、シリコン太陽電池の製造コストを「5分の1~3分の1」にまで削減できると見込まれています。
今後、家庭でペロブスカイト太陽電池を導入する際の目安として、現在主流の、シリコンソーラーパネルに触れてみます。
経済産業省の最新情報によると、日本の太陽光発電システムの導入費用は2024年において、1キロワット(kW)あたり約37万円から41万円となっています(kW単価=設置費用総額÷パネルのkW数)
一戸建ての場合、設置容量の目安は、3人家族の場合で4.57kw、4人家族の場合は4.80kw、5人家族の場合は5.60kwです。
4人家族であれば、40万円×4.8KW=192万円(目安)となります。
これを、ペロブスカイト太陽電池に置き換えてみると、導入費用が「5分の1~3分の1」に。
こうなれば、かなり嬉しいですね。
★政府の補助金や支援政策の影響
ペロブスカイト太陽電池の普及には、各国の政府が提供する補助金や政策が大きな役割を果たしています。
これにより、導入コストが実質的に下がり、家庭用としての普及が進むと期待されています。
例えば、日本では再生可能エネルギーの推進を目的とした補助金制度が活用できます。これにより、導入コストの負担を軽減しやすくなっています。
ペロブスカイト太陽電池の性能の特徴と強み
ペロブスカイト太陽電池の最大の特徴は、そのエネルギー変換効率の高さと設置場所の柔軟性です。また、環境に優しいリサイクル性も大きなメリットです。
★エネルギー変換効率の高さ
ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率は20%を超える場合もあり、これは従来のシリコン太陽電池(最高記録が26.7%)に匹敵する数値です。
ペロブスカイト太陽電池の効率向上の可能性はまだ大きいとされています。
その理由は、ペロブスカイト太陽電池が赤外光を活用できるためです。
地球に到達する太陽光の内訳は、可視光が50%、紫外光が6%、赤外光が44%です。
従来の太陽光発電は可視光のみを利用していますが、ペロブスカイト太陽電池は赤外光も利用可能な製品が出始めています。
赤外光の利用が進むと、エネルギー変換効率は大幅に向上すると期待されています。
このように、開発が進むにつれて、効率がさらに向上する可能性があります。この点が、将来の主流技術として注目される理由の一つです。
★設置場所の柔軟性:壁面や窓への対応
軽量かつ柔軟性のある構造により、壁面や窓といった垂直面への設置も可能です。
これにより、都市部のビルなどでも発電面積を確保しやすくなります。
また、建築材と一体化させることで、見た目を損なわずに発電設備を導入できる点も魅力です。
★リサイクル性と環境負荷の低さ
ペロブスカイト太陽電池は、リサイクルが容易であることから、廃棄時の環境負荷が低いとされています。
この点は、環境問題への意識が高まる中で大きな利点となります。
さらに、製造過程でのエネルギー消費が少ないため、製品全体のライフサイクルにおいても環境への負荷を抑えることができます。
家庭用ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池の価格比較
家庭用太陽電池を選ぶ際、ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池の価格比較は重要なポイントです。
それぞれの製造コストや設置コスト、さらに長期的な運用費用まで考慮する必要があります。
★製造コストの差異
ペロブスカイト太陽電池は、製造工程が簡素化されているため、シリコン太陽電池よりも低コストで生産可能です。
特に、インクジェット印刷技術を活用した製造プロセスが主流になれば、さらなるコスト削減が期待されます。
また、ペロブスカイトの主要な素材はヨウ化鉛です。
ヨウ化鉛は鉛とヨウ素の化学合成によって作られるため、材料と製造のコストはシリコンウエハに比べて大幅に低く抑えることが可能です。
しかしながら、シリコン太陽電池は技術的に成熟しており、大量生産が進んでいるため、現時点では安定した価格帯で市場に供給されています。
この点が、現状の価格競争力に影響しています。
★設置コストの違い
ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟性があるため、設置の自由度が高く、場合によっては従来のシリコン太陽電池よりも低コストで設置できます。
例えば、屋根の補強が不要な場合が多く、施工費用の削減が期待できます。
しかしながら、ペロブスカイト太陽電池はまだ市場での普及が進んでいないため、専門的な設置技術やノウハウが必要となる場合があります。これが初期費用に影響することもあります。
ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池の性能の違い
価格面だけでなく、性能の違いも重要な選定基準です。エネルギー変換効率、耐久性、そして曇天時の発電性能について比較していきます。
★エネルギー変換効率の比較
ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率は現在20%以上に達しており、シリコン太陽電池と同等かそれを上回る性能を示しています。
この効率の高さは、少ない面積でも高い発電量を確保できることを意味します。
一方、シリコン太陽電池は技術的に成熟しており、安定した効率を提供していますが、ペロブスカイト太陽電池の効率向上ペースを考慮すると、将来的には逆転する可能性があります。
★耐久性と寿命の差異
ペロブスカイト太陽電池は、耐久性の向上が現在の課題となっています。
紫外線や湿気に対する耐性が低いため、シリコン太陽電池に比べて寿命が短い傾向があります。
これに対し、シリコン太陽電池は長い耐用年数を持ち、多くの場合、20年以上の寿命が期待できます。
この点が、現時点でシリコン太陽電池が選ばれる理由の一つです。
★曇天時の発電性能の優位性
ペロブスカイト太陽電池の最大の利点の一つが、曇天時や弱い光でも高い発電性能を維持できる点です。
この特性により、日照条件の厳しい地域でも効率的に発電できます。
一方、シリコン太陽電池は日射量が多い地域でその性能を最大限に発揮します。
そのため、設置場所の気候条件によって、どちらが適しているかが異なります。
家庭用ペロブスカイト太陽電池の課題と、導入時期はいつ頃になるのか
ペロブスカイト太陽電池は、多くの可能性を秘めた技術ですが、課題も存在します。
これを克服することで、将来的に普及が拡大すると考えられます。
★耐久性の向上が必要な理由
ペロブスカイト太陽電池の最大の課題は耐久性です。湿気や紫外線に弱いため、長期間の使用に耐える改良が求められています。
ペロブスカイト太陽電池に使用される原材料の一つであるヨウ素は、安定性に欠け、容易に劣化するという短所があります。
ヨウ素を使い続ける場合は、ヨウ素を保護する技術が必要になります。
また、同時に、ヨウ素を使用を継続するよりも、より耐久性の高い別の物質の使用ができないか検討も行われています。
この課題を解決するためには、封止技術や材料の改良が重要です。研究が進むことで、寿命の延長が期待されています。
★「ペロブスカイト太陽電池への支援」が国の政策方針に
令和6年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」では、
ペロブスカイト太陽電池への支援が具体的に記載され、政府が重点的に取り組む技術であることが強調されました。
ですので、今後、家庭用ペロブスカイト太陽電池の普及が進んでいくということが予測されます。
ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力等の目標及び革新技術の開発と社会実装
の早期実現に向けた支援や制度的措置の検討、国際的な研究開発体制や国際標準の整備、人材育成やサプライチェーンの構築に向けた支援を行う。
引用元:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024」
★ペロブスカイト太陽電池の一般販売が始まる!
さて、気になるのが、いつ頃家庭用に導入できるのか?ということ。
日本経済新聞電子版は、2024年11月15日
「薄くて曲げられる『ペロブスカイト型太陽電池』を発明した桐蔭横浜大学の宮坂力・特任教授は、自身が代表を務める大学発スタートアップを通じて年内にも電池の一般販売を始める」
と報じました。
名刺サイズの電池で38,000円。
安いのか、高いのか。そのコストパフォーマンスに期待したいところです。
このことから、実用化の波はすぐそこにきているといえます。
薄くて曲げられるペロブスカイト型太陽電池を発明した桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は、自身が代表を務める大学発スタートアップのペクセルテクノロジーズを通じて年内にも電池の一般販売を始める
— Tornado1116231091 (@Hide_o16) November 15, 2024
名刺サイズの電池を販売し、価格は3万8000円程度https://t.co/9x1z2VKqvM
家庭用太陽電池を選ぶ際のポイント:ペロブスカイト太陽電池を含めて考える
家庭用太陽電池を選ぶ際には、価格や性能だけでなく、設置場所や利用環境、さらには補助金や政策の活用など、多角的な視点から比較することが重要です。
ペロブスカイト太陽電池を選択肢に含める場合、それらの特徴を十分理解しておく必要があります。
★価格と性能のバランスを考慮
ペロブスカイト太陽電池は、高いエネルギー変換効率と低コストの可能性を秘めていますが、耐久性や寿命の課題が残っています。
そのため、長期間の利用を考える場合、コストパフォーマンスを重視して比較検討する必要があります。
一方で、シリコン太陽電池や薄膜太陽電池も依然として高い信頼性を持っており、実績に基づく選択肢として検討する価値があります。
初期費用と長期的な運用コストを総合的に評価しましょう。
★設置場所と利用環境に適した選択
ペロブスカイト太陽電池の柔軟性や軽量性は、設置場所の制約が少ない点が大きな強みです。
例えば、屋根だけでなく壁面や窓への設置も可能であり、都市部やスペースが限られた環境での活用が期待されています。
また、曇天や日陰が多い地域では、弱い光でも効率的に発電できるペロブスカイト太陽電池が優位性を発揮します。利用する地域の気象条件も選定の重要なポイントとなります。
★補助金や政策支援の活用
太陽電池の導入には政府の補助金や税制優遇措置を活用することが非常に有効です。
ペロブスカイト太陽電池も対象となる場合が多く、これらの支援を活用することで、初期費用を大幅に削減できる可能性があります。
2024年10月8日には、経済産業省が、「ペロブスカイト太陽電池」の実用化を目指す官民協議会を開き、利用者に補助金を支給して普及を促進する戦略案の概要を示しました。
価格が従来の太陽光パネルを上回るため、差額分の補助を通じて導入を推進する方針です。2025年度からの支援開始が計画されています。
また、日本では再生可能エネルギーの普及を促進するための自治体独自の補助金制度が存在します。
導入前にしっかりと調査し、最も有利な条件で導入を検討することをお勧めします。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、家庭用太陽電池市場において注目すべき新技術です。
現時点では耐久性などの課題があるものの、製造コストの低さや設置の柔軟性、そして弱い光でも発電できる性能の高さなど、多くの魅力を備えています。
家庭用太陽電池を選ぶ際には、ペロブスカイト太陽電池を含む各種太陽電池の特徴を理解し、自分の利用環境や予算に合った製品を選ぶことが重要です。補助金や政策を活用しながら、持続可能なエネルギー利用を目指しましょう。
今後の技術進歩により、ペロブスカイト太陽電池の可能性はさらに広がることが予想されます。この新しい技術が、再生可能エネルギーの普及と持続可能な社会の実現に大きく寄与することを期待しましょう。
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